LUI 誌-PLAY BOY 誌


Q) インスピレーションはどこから沸くのでしょう?
どうして、何かを入れたり出したりしている、股を開いた女性を描いているのですか?

A)
これの回答としては、以前写真集で使い損ねた序文の一部をそのまま当てさせていただきます。
文体は、その時のもののままなので違和感があると思いますが。
内容としては回答に値すると思います


序文より抜粋

「私の作品に緊縄が良く出て来る。これは私の生来の嗜好という訳ではない。
撮影を始めた頃のモデルさんに「縛った写真を撮って欲しい」と頼まれたのが始まりだ。

縄を使った写真はありきたりなので、ホースを使ってみた。そして次に緊縄を作品に取り入れたのは最初の緊縄撮影から数年後だ。作品が紹介されるようになった雑誌が「SMスナイパー」というSM誌だったことで、初めは誌風に合わせて緊縄を取り入れてみた。
するとこの「縛る」という行為は色々な意味を含み、表現としてものすごく面白いものであることを発見した。これにはSМに縁のなかった私に発表の場を与えてくださった編集長の渡邊安治氏に感謝している。
 縛る事により他者からの「囚われ」を表したり、また精神的な自分自身の「囚われ」も表現出来る。それは神経症で生活の全てが自分自身の思念で拘束されていた私の状態をも表している。
 また縄やホースを性器から這い出す事により、それは男根にも成り、またへその緒にも成り、色々なものへと繋がることが出来る。
私は特にこの「へその緒」のイメージが好きで多用している。何ものかに繋がって養分をもらい眠る少女は安らかな顔をしている。
これらの安らかに眠る少女は童話に出てくるお姫さまに似ている。
 童話で特に好きなものに「眠り姫」がある。
私は以前から 私の「眠り姫」に対する嗜好と人形愛は同質のものではないかと考えていた。
 天使のように愛らしく、鴬のように美しく唄い、何より国中で一番美しい一五、六才の少女が件の姫君である。その姫君が豪奢なアンティークの衣装を身にまとい、天蓋のあるベッドで百年の眠りについている。私はそのイメージに甘いエロスを嗅がない訳にはいかない。
 そしてこれら童話と同じく私の作品に少なからず影響を与えているものにこの人形愛がある。
作品に出てくる少女達は、押しなべて無表情である。それは人形的に演出している意味もある。
またストーリー上、モデルは何らかの物語の「お姫さま」でもあり得る。

 このような妄想により作品は童話や古典、またオリジナルのストーリーにそって展開している。それらは物語の挿絵のように撮影されている。
当初、童話から独自のエロティックな解釈を加えて作品化していたが、エロティックな妄想を喚起する童話は限られていて、すぐに底をついた。それからは童話風のエロティックなオリジナルストーリーを作り撮影する事が多くなった。作品は大体5点から10点くらいの写真で構成され、起承転結を成している。

 制作当初、テーマはもっぱら死と再生であった。オリジナルストーリーは次のような流れが多い。
少女が異界に彷徨い魔物に囚われて陵辱を受ける、または死をもたらされるが自ら力強く解き放つ、または魔物や異界と同化する。
異界や魔物は死の比喩であることが多い。またはモデル自身の障害を暗喩している。
それは魔女により死(眠り)をもたらされたお姫さまが異界に囲まれ眠り、やがて復活するという件のストーリーと同様である。
 私はこれらの撮影を繰り返すうちに、徐々に死と親しみ交わり、親和条約を結ぶに至っている。これは私がエロスに原始的な宗教を見ているからかも知れない。私は屋根裏部屋で繰り広げられるモデル達の性愛に一種魔術的な物語を与え印画紙に定着させ、私自身のイコンとしている。
この行為は宗教を持たない私の死との新たな付き合い方である。」


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