カメラ女奇譚

2008年4月の作品。2度にわたり作品集の表紙を飾ってくたれ椿さんの久しぶりの撮影。
東京からわざわざ作品撮りの為にお越しいただく。
撮影案も何もない状態から約1週間で作り上げた。彼女のモデル力のお陰だと思う。

イメージは8点中5点フラッシュにてアップ。
お話は掲載当事のものを加筆。ストーリーとしては気に入っている。
お話に出てくるローライフレックスは昭和30年父が2万円の月給の時、10万で買ったドイツ製高級二眼レフカメラ。
私たち双子の出産で二年後に質草となりました。

父がボケて亡くなる半年前、急にヨドバシへ連れて行って欲しいと言い出しました。
なんとローライフレックスを今一度買いたいと言うのです。
現在でも新品ならば30万以上する高級機。しかもマニュアル。ボケている上に手が震える父に扱えるとは思えない。
説得して買わないように言ったのを思い出した。
それを今、若い椿さんが購入して持たれている。
不思議だ。

街頭テレビのプロレス中継が終わり、砂埃と枯葉の舞う広場は急に寂しくなった。広場の隅には先週からテント小屋が張られている。
月夜に照らされた白いみすぼらしいテント小屋。赤い怪しい裸電球が入り口を照らしているが、客らしい人は殆ど居ない。私は木戸銭を払い何気にその小屋へ足を踏み入れた。

テントの中は布で仕切られていて、それぞれに「人魚姫」やら「蛇女」、「ポンプ人間」等と、どれも子供騙しの様な仮装で彩られている。まあ、口から金魚を吐き出す男は面白かったが・・・
「半陰半陽」と半紙に大書され貼られた檻の中、ペニスを生やした女が擦り切れたソファに横たわっている。
しかし裸電球で照らされた小屋は薄暗く、そのペニスが本物か偽物か判然としない。女ではなく乳を膨らませた男かも知れない。秘密を知りたければ金を小屋番に渡せば良い。テントの奥の小部屋へ通され、そこへ件のフタナリがやって来る。そこで秘所をじっくり確かめて、女の穴にイチモツを入れたり、万が一男だったら彼のイチモツをこちらの穴に入れてもらったり出来るといった具合だ。
 私は既に五十も過ぎ不能の日々を過ごしているので本物のフタナリであろうが玩具のペニスであろうが興味はなかった。
しかし私はこの檻の前から、かれこれ小一時間動けずに居る。それは女の首にかかっているカメラが気掛かりで仕方が無いからだ。
私は名の知れたカメラ道楽なのだ。
先ず見世物小屋でどうしてカメラなどぶら下げた女が居るのか不思議だった。そして良く見ると、私の目に狂いがなければ(勿論無いのだが)、カメラはローライフレックスと言う高級機だ。月給取りの給料半年分の値打ちものだ。そんなものをどうしてこのような下衆な女の手にあるのか。私の好奇心は爛々と静まる気配はない。

 結局、小屋番に五百円を渡し奥の小部屋で女と会うことにした。三畳ほどの部屋に畳一枚分のベッドがありそこに座って待っていると女はドアを開けて入って来た。間近で見ると思っていたより若く随分とはっきりした顔立ちをしている。私は直ぐに視線をカメラに移した。
「ローライだ」当に五十九年製の本物だった。しかしレンズが無い。
「レンズは?」と尋ねると女は笑いながら私のズボンのボタンを器用に外し、あっと言う間にペニスを吸いだした。
「悪いね、もう立たないんだよ」と私は苦笑いしながら女に言った。すると女は首からカメラを取るとレンズの穴に私のペニスを入れた。女の悪戯に付き合っていると、突然ペニスがドクンドクンと脈打ち出して巨大になり、みるみる大きなレンズの穴を塞いでしまった。
「きつい、カメラが外れない」と訴えると、女は四つ這いになるように促した。私はベッドの上で犬のような格好で女に尻を向けていると、背後で女が服を脱いでいる気配がする。振り返ると女は裸になり、その股間からは何かが生えている。先程のペニスだ。
しかしそれは玩具のペニスではなかった。それは黒々と光るカメラのレンズだったのだ。
女が私に重なるように近づいて来ると、冷たいレンズの感触が私の肛門に触れた。「あっ」と思う間もなく次の瞬間、激しい痛みが走った。
「これはテレローライなの。望遠レンズだから長くて気持ちいいのよ」と言いながら女は陽気に腰を振り私の腸を掻き回した。
「ポン」という音と共に彼女の性器からレンズは外れ、私の肛門にレンズがそのまま突き立っている。
ボディもレンズも体の一部の様に抜けなくなっていた。
私は座ることも出来ずに犬の様に這いながら女が何とかしてくれるのを待っていた。
すると屈強そうな男が二人入って来るとベッドごと私を持ち上げた。私は女の入っていた檻へと運ばれて行った。

薄暗い場内から客達の嘲る様な笑い声が聞こえてくる。
そして檻の前には「カメラフェチ」と大書された半紙が貼り付けられた。


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